4月19日付の紙面で報道された内容は、日本医学放射線学会や日本放射線技術学会などの12団体でつくる「医療被ばく研究情報ネットワーク」で決められ、主な検査ごとに患者さんが受ける放射線量の基準を示したものです。

 現状では同じ検査でも病院によって放射線線量に数倍の違いがあります。これは線量が高い方が鮮明な画像を得られることも一因となっています。今回、医療被ばく研究情報ネットワークによって決められた基準は、学会などが行った調査での各検査における放射線線量を低い方から順に並べ、原則として4分の3に位置する値としました。これは国際機関が推奨する方法であり、実態調査と基準の見直しを繰り返し、全体の線量を段階的に減らしていくことを目指しています。

 今回設けられた基準の例として示されたCT(コンピュータ断層撮影)検査では、CTDIvol(CT線量指標)、DLP(線積分線量)という二つの評価値が使用されています。

 CTDIvolは“ミリグレイ”(mGy)という単位で表され、CT検査で人体に吸収される線量の指標となる値です。またCTは患者さんの寝台が動きながら撮影するため、人体に吸収される線量の指標に撮影範囲の長さを掛けた“ミリグレイ・センチメートル”(mGy・cm)という単位で表されるDLPが用いられます。いずれの値もCT装置の性能を評価するための方法であり、国際的に定められた測定法が使用されます。

 CTDIvolやDLPの線量は患者さんがCT検査で受ける線量を示してはいませんが、最近のCT装置には、これらの値を自動的に表示する機能があります。そのためCT検査を行う際に表示される値を基準と比較することで、過剰な医療被ばくの抑制が可能となります。

 新聞紙面で例として紹介されたCT検査の基準は、体重50~60キロの成人の頭部の被ばくは1350ミリグレイ・センチメートル、胸部CTは550ミリグレイ・センチメートル、小児(1~5歳)の頭部の被ばくは660ミリグレイ・センチメートル、胸部は300ミリグレイ・センチメートルと紹介されています。

 国際放射線防護委員会がまとめた係数を利用して、この数値を全身への被ばくの影響を表す“実効線量”(単位はシーベルト)に換算したものを表にまとめます。

 

  DLP(線積分線量) 実効線量
(ミリグレイ・センチメートル) (ミリシーベルト)
成人頭部CT 1350 2.8
成人胸部CT 550 7.7
小児頭部CT(1~5歳) 660 4.4(1歳換算)
小児胸部CT(1~5歳) 300 7.8(1歳換算)

 今回、医療被ばく研究情報ネットワークで統一基準が決められたことは、過剰な医療被ばくを抑えるための大きな一歩です。基準よりも高い放射線線量を用いている医療機関は診断に支障がない限り基準以下まで下げてもらう努力を行い、病院間の線量の差のバラツキを段階的に減らしていくことを目指しております。また、医療被ばく研究情報ネットワークはインターネットにて情報提供を行っておりますので、併せてご参照下さい。

 医療被ばく研究情報ネットワーク:http://www.nirs.go.jp/rd/structure/merp/j-rime.html