重症な大動脈弁狭窄症は,胸痛,息切れ,失神などの症状がでると数年で死に至ることが報告されています.発症してから手術対応しない場合には非常に予後が悪いことも明らかとなっています.この病気への治療法のgold standardは外科的な大動脈弁置換術であり,人工弁置換術が唯一の延命効果のある治療とされています.しかしながら,全患者の3割以上はこの外科療法の対象外となっています.大動脈弁狭窄症は高齢者に発症が多く,手術に対するリスクだけでなく合併症の頻度からも手術を断念せざるを得ないためです.つまり,そのような患者さんにとっては発症すれば成す術もない状況となっていました.
 この大動脈弁狭窄症に対して2002年フランスで外科療法とは違った手術方法TAVI(Trans catheter Aortic Valve Implantation)が開発されて実施されました.これは血管内手術と言われるもので,鼠蹊部から経皮的にカテーテルを血管内に挿入して心臓付近まで誘導,そしてカテーテルを介して遠隔操作で大動脈弁を置換する手技です.胸部を大幅に開胸していた従来のような負担をまったくなくせる治療方法です.今日,ヨーロッパ,北米を中心に施行されてすでに10万人以上の症例数となっています.本邦でも2010年から保険診療の承認に向けて全国3施設で実施が始まりました.治療ディバイスも第一世代,第二世代と向上を重ねており,2014年1月にはさらなる上位モデルの治療ディバイスがヨーロッパで認可され普及し始めています.
 そして2013年10月より本邦においてTAVIが保険償還されることとなりました.本邦では2014年5月までに全国で400例以上が施行され,今日では800例を超えています.30日死亡率は1%以下と欧米のデータと比較しても非常に良好な成績を収めています.世界と比してやや出遅れ気味であった本療法ですが,十分な管理監督体制での実施後,世界と比較しても際立つ治療成績といえます.
 本シンポジウムの主たる目的は,この新しい治療法を安全かつ安心できる治療環境が整備されていることを含めて広く一般市民に知ってもらい,大動脈弁狭窄症の患者さんが抱く不安を取り除くことです.
 基調講演は「かわりつつある弁膜症治療:低侵襲にむかって」と題し,弁形成のこと,小切開の弁膜症手術,TAVIの簡略な解説を行います.また大動脈弁狭窄症はさほど身近とはいえない病気であり,発症しない限りなかなか理解し難い病気であるため一般市民に分かりやすい解説とします.シンポジウムは,最初に治療手技について医師によりワークショップ方式で講演を行います.TAVIは医師による治療ですがハートチームの存在が重要です.最近の医療は患者さんや家族を含めたチーム医療が問われています.そこで最新の治療法であるTAVIについて医師,看護師,診療放射線技師,臨床工学技士の四者視点でチーム医療を踏まえて講演を行い,TAVIの安全性・高度性について説明を行います.最後には,総合質疑応答の時間を設けて会場からの質問にできる限り回答します.なお,4団体(日本循環器学会,日本心血管インターベンション治療学会,日本胸部外科学会,日本心臓血管外科学会)によりTAVI施行のための経カテーテル的大動脈弁置換術関連学会協議会が発足していますが,さらなる安全性と高度性が保障されるための専門学会化されることがパブリックコメントされています.
 TAVIが患者さんのご家族まで含めて,広く浸透する契機となることを切望するとともに,市民の皆さまの医療知識の啓蒙に貢献できれば幸いです.多くの市民の皆様のご参加をお待ちしています.

日時 平成27年11月15日(日) 13:30~16:30
会場 メルパルク京都
〒600-8216 京都市下京区東洞院通七条下ル東塩小路町676番13  
TEL 075-352-7444(代)
参加費 無料  
事前申込 不要
プログラム 司会:錦  成郎(天理よろづ相談所病院), 菊元 力也(洛和会音羽病院)
   
1. 基調講演「かわりつつある弁膜症治療;低侵襲にむかって」  
 
大阪市立大学医学部 柴田 利彦
2. シンポジウム  
 
1) 「TAVIを安全に施行するテクニック -ハートチームの役割-」
 
帝京大学医学部 今水流智浩
2) 「術中看護について」  
 
天理よろづ相談所病院 安藤 理裕
3) 「術後看護について -ICU入室から一般病棟へ退室-」
 
天理よろづ相談所病院 臼井 千春
4) 「TAVIに携わる診療放射線技師の役割と責任」
 
九州大学病院 宮崎 仁志
5) 「転ばぬ先の臨床工学」  
 
国立循環器病研究センター 西垣 孝行
3. 総合質疑・応答  
後援 京都府,京都市,京都府医師会,京都私立病院協会,京都府放射線技師会,京都府看護協会,京都府栄養士会,京都府臨床検査技師会,京都府介護支援専門員会,KBS京都,京都リビング新聞社,京都新聞
連絡先 公益社団法人 日本放射線技術学会 事務局
TEL 075-354-8989  FAX 075-352-2556

 

ポスター(PDF

h27_1115poster-m