本学会では,平成28年4月に開催される第72回総会学術大会より,口述研究発表,モニタ発表およびCyPos登録のすべてのスライドの全面英語化を予定しています.このスライドの全面英語化は,本学会で発表される放射線技術学に関する優れた演題の多くを広く海外に発信することで,本学会が世界における放射線技術学のリーダーとしての役割を果たすために必要な国際化事業の一部です.また平成30年4月の第74回総会学術大会では,口述発表の50%が英語発表を行うように平成26年3月に国際化特別委員会から答申が出されています.(詳細は学会誌第70巻5号掲載“[委員会報告]国際化特別委員会・答申”)

本誌の「お知らせ」は,スライドの英語化を含めて,大きく変化しつつある本学会の学術大会の発表方式の変更や,本学会における総会および秋季学会の位置づけ等について,その意義や今後の方針を,会員の皆様にご理解いただくことを目的とします.

1.総会学術大会における演題発表スライドの全面英語化について

 本学会は世界で唯一,放射線技術学を専門に取り扱う学術団体であり,その学術的レベルが世界のトップレベルであることは疑いのない事実だと考えます.そのため,放射線技術学に関わる新しい発見や事実を国内だけで共有するのではなく,広く世界に向けて発信することが本学会の責務だと考えます.ただ,本学会の学術大会で発表される演題がいくら優れていても,その内容を世界に向けて発信することは,現時点では“英語への不慣れ”という点から多くの場合に困難が伴うと思われます.したがって,将来的に世界中から研究者が日本における放射線技術学の先端研究を学ぶべく本学会の学術大会に参集する日のために,できるだけ早く研究発表のスライドを英語化し,そのために必要な英語による学術的表現や,英語発表のノウハウに関して慣れる必要があると考えます.一部の会員の皆様が危惧されているように,全面英語化によって,しばらくの間は不十分な英語レベルに起因する問題が生じると思われます.しかし,個々の会員が研鑽し,会員同士で切磋琢磨することで,多くの志ある会員が英語による発表に慣れていくことを期待します.

2.全面英語化の対象について

 前述のように総会学術大会では,将来的に世界中から放射線技術学に興味を持つ研究者が参集することを想定して発表スライドの全面英語化を進めていますが,総会学術大会の開催には,会員への学術的教育という,もう一つの大きな目的があります.現時点においては,会員への学術的教育を第一に考えた場合,スライドを英語にするメリットは少ないと考えます.そのため,総会学術大会で実施している教育目的のシンポジウムや各専門部会企画,教育講座等は,原則的に日本語スライドを基本とし,スライドの英語化の対象外とします.ただし,海外招聘講師による講演や,英語スライドの方が適当と考えられるプログラムにおいてはその限りではありません.また,演題応募時の抄録については,現行のまま,日本語抄録による応募を基本とし,英語の口述発表を希望するものについてのみ英語抄録による応募とします.なお,各地方支部の特色を活かして開催される秋季学術大会については,基本は日本語スライドとします.ただ,秋季学術大会では,これまでのようにICRST(国際放射線技術科学会議)を併催する場合があり,そのICRSTにおいては,当然ながら英語スライド,英語口述発表となります.なお,若手研究者の育成と地域レベルでの研究の活性化を大きな目的として開催されている地方支部主催の学術大会については,しばらくの間は,各地方支部の判断に任せることになります.

3.演題審査および発表区分に関する総会学術大会と秋季学術大会の違いについて

 本学会では,総会および秋季学術大会への応募演題の審査はプログラム委員会が担務し,総会,秋季学術大会の区別なく,また専門分野間の格差が生じないように公平な演題審査を行っています.総会学術大会においては,すべての応募演題を同じ審査基準で判定し,その評価が上位のものから順に英語発表推薦,口述発表と,モニタ発表に発表区分を決定し,一定の審査基準を満たさない演題,もしくは倫理的に問題のある演題を不採択としています.しかし,専門分野別の応募演題の格差は避けようがなく,発表会場の人数の制限や,プログラム的な重複を避けるために,特定の専門分野(CT,MRなど)では,他の専門分野よりもモニタ発表となる割合が高くなっていることをご了解ください.また,秋季学術大会においては,大会ごとに会場の大きさや数,収容人数に違いが生じます.そのため,大会によっては紙ポスターによるポスター発表の区分を設けています.ポスター発表の希望を募る場合でも,原則はプログラム委員会の判断により発表区分が決定されます.したがって,秋季学術大会でポスター発表の希望を募った場合は,総会時におけるモニタ発表のように,演題審査の評価によって区分けされるものではないことをご理解ください.

4.総会および秋季学術学会における座長の役割と質疑応答について

 総会および秋季学術大会における座長の役割は非常に重要です.座長は,発表内容の疑問点だけを追求するのではなく,個々の研究発表の良いところを引き出して,その点を会場の聴衆に伝えることで,会員の知的好奇心を高め議論を盛り上げることを心がけなくてはいけません.本学会の学術大会における研究発表セッションの座長は,各専門部会および地方支部からの推薦により作成された座長候補のデータベースの中から専門分野に応じて選出されており,このデータベースは大会ごとに更新されています.基本的には特定の専門課題について継続的に研究を実施していて,学会発表や論文発表の経験が十分にあると認められた会員が座長候補として推薦されます.本学会では,第71回総会学術大会から発表会場での質疑応答の際,質問をされる方が,所属氏名を述べることを省略するように推奨しています.また,以前のように座長からの呼びかけに対して質問のある人が挙手し,座長の指名を受けてから質問を行うのではなく,質問のある人は,発表が終わるのに合わせて,質問用のマイクの前に並び,座長の指示で,順に質問を行うようにしました.これは,短い質疑応答の時間を有効に使い,研究に関する活発な議論を促すことが目的です.本学会が世界的に認められる真の学術団体となるために,より一層の活発な議論が学会会場で繰り広がられることを期待します.