第80巻の論文特集号では「ファントムスタディ」と題して,ファントムを活用した放射線技術研究の論文を募集します.放射線技術学において,人体の代替として用いられるファントムは,各種モダリティの技術評価や性能評価の重要なツールとして位置づけられています.本誌でも,2021年から2年間,「放射線技術学におけるファントムスタディ」をテーマにした教育講座を連載し,各種モダリティの専門ファントムの紹介,使用法,そして自作方法に関するノウハウを紹介してきました.

 近年,日本では人を対象とした臨床研究の倫理指針が厳格化する中で,ファントムスタディは放射線技術学においてますます重要な役割を担うことが予想されます.一般的に,臨床における放射線医学研究を考えると,ファントム検証だけによる研究は学術論文としての価値が低く評価される傾向にありました.しかし,今回の特集号では,敢えてファントムに焦点をあてることで,放射線技術学におけるファントムスタディのさらなる進展を促し,未開拓のデータや知識への探求を刺激することを目指しています.そしてその結果として,活発な投稿が促され,日本放射線技術学会の学際化の推進に寄与することを期待しています.

 本特集号では,ファントム自体の開発,ファントムを用いた画像診断装置の性能評価・精度管理,新しい撮影・補正技術の評価,アーチファクトの再現・評価,定量精度の検証,被ばく線量の評価,撮影条件や再構成条件の最適化,デジタルファントムを用いたシミュレーション検討など,ファントムを用いた研究であれば全てが対象となります.分野を問わず,「臨床技術」や「資料」としての報告から「原著論文」としての新規性の高い研究成果の報告まで幅広い内容の投稿を歓迎します.この特集号を通じて,会員の皆様の研究成果が放射線技術学の発展に一石を投じるとともに,将来のご自身の研究や論文執筆への意欲を刺激するきっかけとなることを期待しています.皆様からの積極的なご投稿を心からお待ちしております.

 

チーフエディタ 三輪 建太 (福島県立医科大学)
エディタ 市川 肇 (豊橋市民病院)
  大村 知己 (秋田県立循環器・脳脊髄センター)
  五月女 康作 (福島県立医科大学)
  高津 安男 (藤田医科大学)
  西丸 英治 (広島大学病院)
  松林 史泰 (がん研究会有明病院)
     
     
1.対象分野 放射線技術に関連するあらゆる分野のファントムを使用した論文で,本学会誌の投稿区分の原著・臨床技術・資料・総説のいずれかとする.
2.論文投稿締切日 2024年6月1日(土)
3.掲載予定号 第80巻第11号(2024年11月20日発行予定)
4.論文の執筆と取扱い ・論文ついては本会ホームページ「学会誌・論文投稿」の投稿規定を参照してください.
    ・非会員の論文筆頭著者の投稿料は,特集号に限って必要ありません.
    ・予定総ページ数を超えた場合や手続きの都合で特集号以降に掲載される場合もあります.