公益社団法人日本放射線技術学会は,世界で唯一,放射線技術学に関連した研究を専門とする学者・研究者で組織された学術団体です.放射線技術学とは,本来,放射線の発生や振る舞いに関する学問(放射線物理学),放射線を発生・管理するための理論や装置に関する学問(電気電子工学,機械工学),放射線が人体などに照射された場合の影響に関する学問(放射線生物学),人体に放射線を照射し,医学的に必要な情報を得るための学問(解剖学,生理学),患者さんの気持ちを思いやるための学問(心理学),様々な病気に関する学問(医学),放射線の量や影響を正確に計測するための学問(計測学),医療画像の質の評価を行うための学問(画像工学,数学),そして,電子情報の管理や統計に関する学問(医療情報学,統計学)という,非常に多くの学問体系を複雑に絡み合わせた学際的な研究分野の一つです.近年になってようやく体系立てられ,新しい学問分野の一つとして,世の中に認められるようになったばかりですが,無限の可能性がそこにはあります.

 レントゲン博士によって1895年にエックス線が発見された当初は,放射線が人体に危害を与えるものだという認識はなく,世の中には被ばくという概念もありませんでした.しかし,エックス線発見から100年以上を経た現在では,放射線が安全だと信じる人は少なくなり,病院で検査を受ける際の被ばくにも人々が関心をもつようになってきました.放射線技術学は前節のように新しい学問分野ではありますが,その研究が目指すところは,「必要最小限の被ばく・患者さんの精神的・肉体的負担で,最大限の医用情報を医師に提供すること,または,医師と協力して最大限に効果的な治療を患者さんに提供すること」であり,このことは,本学会が創立された75年以上前から何も変わっていませんし,これからも変わることはないと思っています.しかし,このように,一見,簡単そうに思えることが,実はとても難しい課題となって私たちの前に立ちはだかっています.それは,一般的に,医用情報の質の向上には,被ばくや患者さんの精神的・肉体的負担の増加が伴う場合が多い,という相反する事象が存在するからです.

 放射線技術学研究は,医療機関で患者さんが受ける医用画像に関わる検査と放射線を用いた治療のすべてを対象とします.一番検査数が多い胸部のエックス線写真だけでなく,CTやMR,血管に管(カテーテル)を入れて造影剤を使って病気を見つけ,場合によっては,詰まった血管を治療する血管造影検査(画像下治療)や,放射性医薬品を用いる核医学検査,がんを放射線で治癒する放射線治療など,数えきれないほどの検査や治療行為について,放射線技術学研究による被ばくや患者負担の軽減を目的とした最適化が必要となります.放射線技術学という学問分野の歴史は浅いですが,本学会の創立以来,75年以上の間に培ってきた放射線技術学にかける情熱と知識は他のどの学術団体にも負けないと私たちは自負しています.

 本学会は,これからの未来も,より良い放射線診療への寄与を使命と考え,医療における放射線の安全な利用と,被ばくによって得られる患者さんにとっての利益を最大限に生かすため,放射線技術学研究に励んで参ります.もしもご質問があるような際は,本ホームページの連絡先に気軽にお尋ねいただければ幸いです.