この度,公益社団法人日本放射線技術学会代表理事を拝命しました大阪大学の石田隆行です.創立81年の歴史がある学会の代表を務めさせていただくことになり,大変光栄に存じますと共に,その重責に身の引き締まる思いです.この場をお借りして,謹んでご挨拶申し上げます.

 日本放射線技術学会は,放射線技術学に関する研究や交流を推進し,学術の進歩発展に寄与することを目的とし,1942年に創立された学術団体です.創立当初は戦時中ですが,そのような状況下においても医療における放射線技術に関する研究が,多くの技術者により続けられました.そして現在の当学会会員である私達は,今でも当時と変わらない熱意と向上心を胸に,放射線技術学の進歩発展のために研究に取り組んでいます.これまでに,春の総会学術大会を79回,秋季学術大会を50回開催し,会員の知識や技術の向上を図ってきました.また,当学会が刊行する日本放射線技術学会雑誌は今年で第79巻を発行するに至り,会員の優れた研究成果が学術論文という形になり,数多く世に送り出されてきました.さらに,日本医学物理学会と共同発刊している英語論文誌(RPT誌)においては,第16巻目にして念願のジャーナルインパクトファクタを獲得し,世界に向けて研究論文を発信しています.

 私は,長年教育・研究に携わった経験から,学術研究をする上で,基礎知識,専門知識を学び深く理解することが非常に重要だと感じています.さらに,放射線技術学が学際的な学問であり,その複合的な知識や技術が学術活動には必要不可欠であるといえます.そのため,高い専門知識を持った専門部会委員や,放射線技術学に関係する他分野の研究者による会員への教育機会の充実が望まれます.これまでも教育委員会や学術委員会を中心として,専門部会,地方支部などによって,教育やセミナーが行われてきました.会員がより高度な学術研究に取り組めるようにするためにも,体系的な教育を進め学術活動をしっかりと支えることが必要だと思っています.

 これまで日本放射線技術学会は,海外留学や国際研究集会派遣による会員への支援,ならびに海外との学術交流を促進するための学術協定を締結することによって国際化を推し進めてきました.欧米諸国やアジアオセアニア諸国などの教育や研究の実態を知り,相互の理解や友情を深めていく中でこそ,真の国際性が生まれると思っていますので,これら国際化に関する事業をさらに活発化させたいと思っています.

 今後の研究においては,異分野の新しい知識や技術を取り入れることが放射線技術学の発展に大きく寄与すると考えています.最近の人工知能(artificial intelligence:AI),4K・8Kの映像技術,量子コンピュータなどがその良い例で,間違いなくこれまでにない放射線技術学の展開が実現されつつあります.このことから,会員の皆様には,是非,広い視野で興味をもって異なる分野との共同研究に取り組んで頂きたいと思っています.そのために,新しい知識や技術を学ぶ環境を整えていくことも学会の大きな役割だと考えます.

 伝統ある日本放射線技術学会の会員が放射線技術学の進歩発展を念頭に事業・活動を推し進め,幾多の素晴らしい先輩方が築いてこられた伝統ある学会の更なる発展を目指し,関連団体とも緊密に連携をとりながら,社会的責務を果たしていきたいと考えておりますので,これまで同様,ご理解・ご支援を賜りますよう,よろしくお願い申し上げます.

2023年4月14日